AI導入の相談先で最初によく聞かれるのが、「AIで何がしたいですか」という質問です。ですが、そこがわからない人の方が正直まだ多いと、合同会社Logika(ロギカ)の松崎亜佐美(まつざき あさみ)さんは言います。
松崎さんは、AIで何をするかより先に、毎日の困りごとを聞くところから相談を始めます。AIと人の役割の分け方がはっきりしているのも特徴です。この記事では、相談の受け方と、AIを使い始める会社が最初に整えることを伺いました。
合同会社Logikaは、2026年7月に大阪で立ち上がったばかりの会社です。社長の赤地周作(あかじ しゅうさく)さんと松崎さんの2人が、共同代表を務めています。松崎さんは総務経理、Webライター、オンライン秘書を経て、いまはAI導入支援と業務整理を担当しています。取材は2026年9月18日にオンラインで行いました。
相談は「AIで何がしたいか」が決まる前でいい

編集長
Logikaへの相談が向いているのは、どのような会社でしょうか。
松崎さん
業務を効率化したいとお考えの会社なら、幅広く向いていると思います。「何がしたいか」がまだ固まっていない段階から相談に乗れるのが、うちの強みです。
聞くのは「AIでしたいこと」より、毎日の困りごと
――相談に来られる方は、AIで何をしたいかが決まっているのでしょうか。
松崎さん:決まっていない方の方が、正直まだ多いです。最初に「AIで何がしたいですか」と聞く相談先は、結構あります。ただ、相談する側は、そもそもAIに何をさせればいいのかを知らないことが多いんです。それでは、答えは出てきません。だからうちは、まず困りごとを聞きます。まだ何も固まっていないけれど、毎日ちょっとこれは大変だな、と思うようなことです。
AIにこだわりすぎず、困りごとの解決を優先する
――AIを使わないこともありますか。
松崎さん:あります。AIの出力に固執するあまり、遠回りすることがあるからです。ツールにもともとある機能で済む場合もあるので、AIの使用にこだわらないことは、すごく意識しています。本当にAIで解決するかどうかは、こちらで相談に乗りながら考えます。
急がなくていいのは、AIを使いこなして困っていない人
――では、まだ相談を急がなくてよいのは、どのような方でしょうか。
松崎さん:すでにAIを十分に使いこなしていて、全然困っていない方には、相談はいらないかもしれません。
ただ、使っていても「もっとこういうことができるんじゃないか」と感じているなら、1回聞いていただくのもいいと思います。人によって、AIの使い方はまったく違います。他の人の使い方を見て「そういう使い方あったんだ」となることは、結構多いんです。ご支援が難しいのは、全部手書きでパソコンもスマホも使わない、という場合ですね。
頭の中にあるやりたいことを、AIで形にして見せる

編集長
これまでのご相談で、印象に残っているものはありますか。
松崎さん
お客様が頭の中で考えていた「こういう仕事をやってみたい」を、AIを使いながら形にして見せたら、「そう、こういうのがやりたかったんです」と言われることがあります。やっていてよかったと感じます。
既存のサービスが合わない人に、欲しかった形を作って見せる
――「形にして見せる」というのは、具体的にはどのようなものを作るのですか。
松崎さん:よくあるのは、既存のSaaS(インターネット経由で使う業務サービス)が物足りない、または機能が多すぎるというご相談です。「実はそのSaaSを使わなくても、いらない機能を外して必要な機能だけを入れた形でできますよ。これがしたいことですよね」と作って見せると、「あ、それです」となります。
お客様から「本当はこういうのが欲しい」と伺えば、そのSaaS以外のツールと組み合わせて本当に欲しかったものが作れると考えています。1個ずつの商品があるわけではなくて、オーダーメイドがメインです。お客様それぞれのご相談に合ったツールの使い方を提案するのが、うちの務めだと思っています。
責任が生じるところは、必ず人が見る
編集長
AIが作った文面や資料について、必ず人が確認すると決めている作業はありますか。
松崎さん
お客様に出すものなら、その直前は必ず人が見るべきだと思っています。AIは出力したものに責任を取れないので、責任が生じるところは人が見る、という考え方です。
AIが作れるのは叩き台で、最終的な出力ではない
――お客様に「ここはAIを使わない方がいい」と伝えることはありますか。
松崎さん:「基本的にAIが作れるのは叩き台で、最終的な出力をするものではない」と、物によっては結構言います。私自身が考えていることを、そのままお伝えしているつもりです。

現場のキーになる人にも、必ずヒアリングする
――長く同じ仕事を担当しているベテランの方が、新しいやり方に抵抗を感じる場面もあると思います。そうしたときは、どうされていますか。
松崎さん:導入したい人と導入したくない人が別々にいる、という状況には、実はまだ出会っていません。
そうした状況になったときに大事なのは、やはりヒアリングだと思います。導入に慎重な方がいない状態で話を進めると、その方は納得できないと思います。だから、キーになる方とも必ずヒアリングする時間が必要です。
実際に触る方と話しておかないと、取り入れたはいいけれど使われない、ということになります。
丸投げは受けず、一緒に作り上げる
――事業を進めるうえで、受けないと決めていることはありますか。
松崎さん:お客様と一緒に作り上げていくものだと思っているので、丸投げは受けない、と社長の赤地と話しています。こちらで最後までやってしまうと、微調整ができないまま進んでしまいます。それではお客様の納得度も満足度も低くなると思うんです。
途中で「こんな感じでどうですか」とお見せしたときに確認していただける方と、一緒に進めていきたいと思っています。
「あの人にしかできない」を、仕事の言語化でなくしてきた

編集長
公式サイトにある「あの人にしかできない」からの解放という言葉には、どのような意味を込めているのでしょうか。
松崎さん
一人社長だと、仕事が全部頭の中にしかないから、人に頼めません。会社でも、この人に頼めば何でもやってくれる、という人がいます。でも、その人が急に休むと、他の人ではわかりません。そこをなくしましょう、という思いです。
2度以上やる仕事は、全部言語化して次の年の自分に渡した
――その思いは、松崎さんご自身の経験から来ているのでしょうか。
松崎さん:はい、私は総務経理を10年ほどやっていました。前任者が頭の中だけで仕事をしていると、引き継いだ人は残っている成果物だけを見て、どう仕事をするかを考えないといけません。
だから私は、2度以上やる仕事は全て言語化することを常にやっていました。総務経理には年末調整や決算など、1年に1回しかやらない仕事がたくさんあります。1年経ったら自分ですら覚えていないので、次の年の自分が見れば再現できる形にしておくんです。
「年末調整の書類は、11月の初めにこのメールで集めればいい」というテンプレートまで作っておけば、仮に私が休んでも誰かができるようになります。属人化させないことは、すごく意識していました。
文字を書けることが強みでなくなり、AI導入支援へ移った
――総務経理の後は、Webライターとして活動されていたそうですね。AI導入支援へ軸足を移した経緯を教えてください。
松崎さん:2020年ごろからWebライターとして活動して、数年後からはオンライン秘書の業務もするようになりました。AIがどんどん入ってきて、文字はAIでも書ける時代になりました。文字が書けることが圧倒的な強みではなくなってきたんです。オンライン秘書の業務にもAIを活用できるようになったことが、軸足を移すきっかけでした。
――会社を立ち上げるまでには、どのような経緯があったのでしょうか。
松崎さん:赤地は、開発に近いところにも力を入れています。私と同じAIを使っているとは思えないアウトプットを出します。そういう場面をよく見ていて、みんなが同じことをできるわけではない、と感じたんです。
2026年の1月ごろから、赤地と私でゲストの方を招いて、AI活用のお悩みを聞くYouTubeライブを始めました。AIを導入しているはずなのに運用できていない、というお悩みが多くて、そういうところにニーズがあるんだと気づいたんです。自分の悩みにAIをどう使えばいいかわからず、次の一歩に進めない方のお役に立ちたいと思いました。
最初から会社を作ろうと考えていたわけではありません。「何かできたらいいね」と始めたYouTubeライブが、意図せず今の会社につながりました。立ち上げたのは、2026年7月半ばです。ノンコア業務(本業以外の業務)をAIに任せて、コア業務に集中できる環境を作るお手伝いができたらいい、というのが軸の一つです。
松崎さん自身は、AIを毎日の秘書として使っている

編集長
松崎さんご自身は、普段の仕事のどこでAIを使っていますか。
松崎さん
秘書のような使い方です。自分の予定は全部AIに入れて、1日の仕事はそこから始めています。
テンプレート以外は出さない、と指示して使っている
――AIエージェント(指示を受けて、ファイルの読み書きなどを自分で進めるAI)は、どのように使っているのでしょうか。
松崎さん:Obsidian(メモを整理するツール)に情報を入れておいて、Antigravity(AIエージェントの一つ)に全体を一覧で見てもらう使い方が多いです。
AIに何かを作らせるとハルシネーション(AIがもっともらしい嘘を出すこと)が起きますよね。でも私はルールに従って動かしているだけなんです。AIはファイルを見に行って、情報を引き出すだけです。創作は挟まず、テンプレート以外のものは出さないように指示しています。
AIを仕事に使い始めるなら、まず会社のルールを作る
編集長
AIを仕事に使い始めるなら、まず何から手をつけるとよいでしょうか。
松崎さん
まだAIを何も使ったことがない状況なら、まず会社のルールを作るところからだと思います。
どこまで情報を入れていいかは、ルールがないと誰にもわからない
――ルールというのは、どのようなものを指しているのでしょうか。
松崎さん:AIにどこまで情報を入れてよいか、という決まりです。会社にルールがないと、どこまで入れたらいいのかが誰にもわかりません。
「安全性のためにAIサービスを法人向けプランにしないとダメなのか、個人向けプランでもいいのか」という話にもなりますよね。でも、何をもって安全とするかは、ルールがないと判断が難しいんです。

会社概要

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 合同会社Logika(ロギカ) |
| 代表者 | 赤地 周作(あかじ しゅうさく・社長)/松崎 亜佐美(まつざき あさみ・代表社員) |
| 所在地 | 大阪府大阪市北区梅田1丁目1-3 大阪駅前第3ビル29階 |
| 事業内容 | AI導入支援(業務整理・仕組み化)、AI研修セミナー、ホームページ制作 |
| 公式サイト | https://logika.co.jp/ |
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インタビューを終えて
取材で一番印象に残ったのは、「2度以上やる仕事は全て言語化する」という総務経理時代の習慣でした。AIに仕事を渡すことは、その仕事を言葉にして渡すことと同じです。
もう一つは、AI導入支援を仕事にしている松崎さんが、「AIが作れるのは叩き台」と言い切ったことです。AIと人の線をどこで引くかは、AI導入を検討する会社が最初に見落としやすい論点だと思います。支援する側がその線を先に決めているかは、相談先を選ぶ目安になると感じました。
AIを仕事に使い始めたい方は、ツールを選ぶ前に、会社としてAIへどこまで情報を入れるかを一度決めてみてください。松崎さんの言う「まず会社のルール」は、そこから始められます。

