「紙に書くよりも、すごく整理される」── 福井の陶芸×マインドフルネス Kinco・大久保雪恵氏が、ChatGPTを「頭の中の整理」に使う理由

つらい思いも楽しかった思いも全部出してみる、全ては今ここへと語るKincoの大久保雪恵さん

瞑想会を控えた日、大久保雪恵さんはスマホのChatGPTを開きます。過去の原稿をもとに返ってきた文章へ「違う、ここを直したい」と返しながら、台本を仕上げていくためです。以前は資料や日々の記録をもとに考え抜いて仕上げ、3〜4日かかっていた原稿が、いまは1日あればできるといいます。

ただ、大久保さんの話は、時短では終わりませんでした。つらい思いも楽しかった思いも、整える前のままChatGPTへ投げる。すると、紙に書くよりもすごく整理されるのだそうです。福井県福井市で陶芸とマインドフルネス瞑想を掛け合わせる、Kinco(キンコ)の大久保さん。

粘土と瞑想がつながった理由と、頭の中を整えるAIの使い方を伺いました。

目次

「粘土は、最強のツール」── 福井で、陶芸とマインドフルネスを掛け合わせる

Kincoの大久保雪恵さんが粘土に触れながら陶芸作品を制作する手元
AI現場ログ編集長
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陶芸とマインドフルネスの掛け合わせとは、どのような活動なのでしょうか?

大久保雪恵さんの顔写真
大久保さん

指先に集中して「今、ここ」へ戻る時間を作っています。福井県で器や人形を作りながら、瞑想会や陶芸ワークショップを開いているんです。陶芸は18年、マインドフルネスは5年ほどになります。

瞑想だけでも陶芸だけでも参加できるように入り口を分けている

――現在は、瞑想会やワークショップをどのような形で開いているのでしょうか?

大久保さん:瞑想だけ、陶芸だけを希望する声もあって、最近は回を分けました。もともとの、瞑想をしてから陶芸に入る会も残しています。キャンドル作家さんと行うキャンドル瞑想や、瞑想の後に体に優しいおやつを囲むスイーツ瞑想もあるんです。陶芸と瞑想を両輪にして、いくつかの入り口を用意しました。

何万年もかけてできた粘土は触れるだけで集中に入りやすい

――粘土には、どのような魅力を感じていますか?

大久保さん:粘土は、私にとって瞑想へ入るための一番のツールです。何万年もかけて作られた土なので、触れているだけで癒しがあるように感じますし、指先を動かすので集中もしやすいんです。陶芸とマインドフルネスをつなぐ最強のツールだと思っています。

ただ、ツールは陶芸でなくても構いません。掃除でも料理でも、雑念が消えて「今、ここ」へ戻れるなら同じです。私の場合、そのツールが陶芸なんです。

「3〜4日かかっていた原稿が、1日あればできる」── 瞑想会の台本を、スマホのChatGPTと一緒に作る

スマートフォンと原稿を使ってオンライン瞑想会の台本を整える様子
AI現場ログ編集長
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AIは、どのような場面で使っているのでしょうか?

大久保雪恵さんの顔写真
大久保さん

一番は、瞑想会の原稿づくりです。過去の原稿と入れたい内容をChatGPTへ伝え、「違う、ここを直したい」と返しながら台本へ仕上げています。以前は、色々な資料を読んだり、ネットで参考になるものを調べたりしていました。日々自分の感情が動いた場面も記録して、考えて原稿を仕上げていたんです。

長いものだと、瞑想会の3ヶ月前くらいから記録して原稿に反映していました。

チラシのキャッチコピーから小さく始めてスマホだけで完結している

――ChatGPTは、どのように使い始めたのでしょうか?

大久保さん:最初は2024年ごろ、イベントのチラシに入れるキャッチコピーを考えるお試しからです。大きな仕事を任せたわけではなく、ちっちゃいところから始めました。2025年からは本格的に使い、瞑想会の台本づくりが中心になりました。

使うのは、ほぼスマホのChatGPTアプリだけです。最初は無料版から始め、いまは有料プランを使っています。

曖昧に伝えても拾ってくれるが最終的に原稿は自分で仕上げる

――思いどおりの文章へ、どのように近づけていますか?

大久保さん:返ってきた言い回しが違えば、その都度伝え直しています。「そんなに直接的に言いたいわけではない」と返す程度ですが、曖昧に言っても結構拾ってくれるんです。

ただ、どうしても伝わらないこともあります。流れは出してもらい、最終的に原稿は自分で仕上げています。

瞑想会の台本作成が手作業で3日から4日かかっていた状態からChatGPTとの往復で1日になった変化を示す図

「暗闇に、客観的に見られる隙間ができた」── 建築業界18年から、陶芸と瞑想へ

陶芸とマインドフルネスの活動を行うKincoの大久保雪恵さん
AI現場ログ編集長
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そもそも、マインドフルネスを始めたきっかけは何だったのでしょうか?

大久保雪恵さんの顔写真
大久保さん

集中力を養いたかったのと、人間関係の悩みの中にいる状況から抜け出したかったからです。建築業界で18年働き、営業へ異動した頃に社内の人間関係で悩んでいました。そんな時に、瞑想を紹介してもらったんです。

書く瞑想で自分は自分の味方なんだと気づけた

――頭の中を紙に書き出す「書く瞑想」は、いつ頃から取り入れたのでしょうか?

大久保さん:瞑想を習っていた最後のほうで教えてもらいました。自分の気持ちを書いて離すことで、自分の本当の気持ちに気づけるんです。それまでは光が見えず、ただ暗闇を走っているような感じでした。書いて客観的に見られる隙間ができると、最終的には自分が自分を責めてつらくなっていたことに気づきます。

そしてまた瞑想することで、第三者の目線から自分自身を客観的に見られるようになります。自分で自分を責める気持ちはなくなり、自分は自分の味方なんだと気づけるんです。全てを受け入れる感謝と、幸せな気持ちになれます。

私にしかできないことを探して陶芸と瞑想を掛け合わせた

――掛け合わせの発想は、どのように生まれたのでしょうか?

大久保さん:陶芸で独立を決めた時、私にしかできないことは何だろうと考えました。器の世界には人間国宝のような作家さんもいて、技術で上を目指したらきりがありません。そこと今から張り合うのは違うと思ったんです。陶芸に集中している時の状態が、瞑想後のすっきりした状態と似ていたことから、瞑想との掛け合わせにたどり着きました。

最初はカフェで5人の会から始めました。にぎやかな場所では集中しづらいという声を聞いて静かな場所へ移すなど、反応を見ながらいまの形にしています。

「感謝のハードルを下げる」── 反応が良かった回に共通していた、誘導の工夫

暗い空間で本物の火を灯して行うキャンドル瞑想の様子
AI現場ログ編集長
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特に反応が良かった回に、共通点はありましたか?

大久保雪恵さんの顔写真
大久保さん

最後に「感謝の瞑想」を入れたことです。ため込んだ気持ちを吐き出して見つめたうえで、感謝へ向かうように誘導すると、「良かったよ」という満足の言葉が増えました。

感謝の瞑想は涙が止まらなくなった自分の体験から生まれた

――感謝の瞑想は、どのように生まれたのでしょうか?

大久保さん:理論的に組み立てたところもありますが、もとは自分の体験からです。当たり前だと思っていたことが、実は当たり前ではないと気づいた時がありました。その時に感謝の気持ちが溢れて、涙が止まらなくなったんです。その体験から、誘導瞑想にも感謝を取り入れています。涙を流すことや感謝の気持ちが溢れることで、幸せな気持ちになれるんです。

日々の忙しさの中で、頭では先のことを考えたり、過去の発言を後悔したりしています。頭の中は常にフル回転しているんです。そんな状態で瞑想に入っても、「今、ここ」に意識を向けるのは難しいんです。

今の自分の心や身体の状態を素直に書き出すことで、余白が生まれます。その余白ができてから、感謝の瞑想や、理想の未来の自分をイメージする時間へ進みます。

感謝の瞑想で目を向けるのは、すでにあることです。「感謝しなければ」と思わなくても、感謝できることは身近にあります。そうやって、感謝できることへのハードルを下げるんです。

感謝すると、「幸せホルモンがドバドバ出る」と感じるくらい、幸せな気持ちになります。自分の機嫌は自分で取れるんです。

キャンドル瞑想では、本物の火にこだわりました。実際に灯すとすごく綺麗で、「前回よりも早く深く入れた気がする」という声もあったんです。キャンドルの炎も粘土瞑想も、全て「今、ここ」を感じるためのツールのひとつだと感じています。

私の紙に最初に出てきた言葉は「忙しい」でした── 取材者が、瞑想会を受けてみた

瞑想会で自分の気持ちを紙に書き出しながら器を手にする様子

記事を書く前に、私は大久保さんのオンライン瞑想会を受けてみました。2026年8月13日、参加費は3,000円。用意したのは紙とペン、普段使っている器だけです。

始まって最初に言われたのは、こうでした。「上手にやろうとしなくていい。正解も間違いもない。途中でそれても、気づいて戻ってくればいい」。

途中の書き出しの時間で、私の紙に最初に出てきた言葉は「忙しい」でした。目新しい発見ではありません。ただ、走りながらだと都合よく忘れている事実を、正面から突きつけられます。

気になった点は、率直に伝えました。何も思い浮かばない場面で、焦る人もいるはずだと。すると大久保さんはその場で「そこもアナウンスに入れてみます」と答えました。指摘を受け止めて、その場で次の回の改善に変える。初回の会でこの姿勢が返ってくる主催者は、そう多くありません。

終盤、目を閉じて座っていると、私は猛烈に眠くなりました。緊張が抜けた証拠だと思います。忙しさに気づいて、それから緩む。この順番を40分で一度通せたことが、いちばんの収穫でした。

「紙に書くよりも、すごく整理される」── モヤモヤも疲れも全部投げて、頭の中を整える

ノートに考えを書き出して頭の中を整理する手元
AI現場ログ編集長
編集長

AIをまだ使っていない方には、何を勧めますか?

大久保雪恵さんの顔写真
大久保さん

頭の中にあることを、整える前のままChatGPTへ投げてみることです。紙に書いていたモヤモヤした悩みを、つらい思いから楽しかった思いまで全部入れると、「こういうことを言いたかったんだね」と整理して返してくれるんです。

整える前の長文をそのまま送るとAIが整理して返してくれる

――頭の中を整理したい時は、ChatGPTへ何を送っていますか?

大久保さん:ワークショップを終えた自分の不安や振り返り、自分がどう感じたかを、順序を考えずに長文で一度に送ります。紙のノートで「なんで、なんで」と深掘りしていた時間が短くなり、紙に書くよりも、すごく整理されるんです。

整理されたものを読むと、じゃあ次はどうしたいのかと前向きに考えられます。送る前に整える必要はありません。

疲れた日の一言からも自分の傾向に気づける

――疲れている時にも、ChatGPTへ送ることはありますか?

大久保さん:「今日はどっと疲れた」と送ると、「とりあえず今日は早く寝な」と返ってくることがあります。それを読むと、眠たい時の私はマイナスに考えがちだなと、自分の傾向に気づけるんです。

まず勧めたいのは、一通目を長文のまま送ってみる、その一歩です。

頭の中の不安や疲れをChatGPTへ長文で送り返答を読み自分で判断して整理する流れを示す図

「最後に直すのは、自分」── AIの答えに「そうじゃない」と返す日の付き合い方

AI現場ログ編集長
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思うようにいかないことも、あるのでしょうか?

大久保雪恵さんの顔写真
大久保さん

思ったような答えが返らない日はあります。最近は「そうじゃないよ」と返すことも増えました。何度か伝えても合わない時は、これまで自分で作った台本を使えばいいと思っています。

具体的に書きすぎず「そうじゃない」と返して言い回しを整える

――AIの答えに、どのような時に違和感を持ちますか?

大久保さん:伝えたい言葉を具体的に書きすぎると、その言葉が直接的なまま返ってくる時です。私が求めているのは、瞑想の誘導として自然に伝わる言い回しなので、違えば「そうじゃない」と返して整えます。

画像やデザインも同じです。案はChatGPTに出してもらい、最後は自分でCanva(デザイン作成ツール)を使って仕上げています。

合わない日は手持ちの台本に戻ればいい

――AIとのやり取りを負担に感じる場合は、どうすればいいでしょうか?

大久保さん:無理に続けなくていいと思います。ChatGPTが合わない日には、10本ぐらいストックがある自分の台本へ戻り、その日向けに手直しするだけです。私は、そういう付き合い方をしています。

「頭を休ませるのが苦手な方の、頭の中を整理する時間にしたい」── 古民家の対面と、オンラインの両方で

Kincoの大久保雪恵さんが制作した器や人形などの陶芸作品
AI現場ログ編集長
編集長

これから、やっていきたいことを教えてください。

大久保雪恵さんの顔写真
大久保さん

頭の中にあるものを全部出して客観的に見る時間を、対面でもオンラインでも続けたいです。頭を休ませるのが苦手な方の、頭の中を整理する時間にもできればいいな、と思っています。

購入した古民家を陶芸カフェと活動を始める人の応援の場にしたい

――対面では、どのような場所を作りたいですか?

大久保さん:自分で購入した古民家を、私の器を使ったスイーツやランチを出す陶芸カフェにしたいんです。陶芸教室やワークショップ、瞑想会もできる場にするつもりです。自分の場所はまだないけれど活動されている方の、応援の場にもしたいと思っています。

カフェのコンセプトは、自分の身体をリセットして、いたわることです。コンセプトに合う方のシェアキッチンや、ネイルサロン、マッサージやエステのレンタルスペースにもしたいです。お店を持つ前のチャレンジの場としても、使ってもらえたらと思っています。

いま瞑想会を開いている築170年ほどの古民家は、オーナーの方からお借りしている場所です。構想を伝えると、まずはここで練習すればいいと背中を押していただきました。経験を重ねながら、自分の古民家で開く場へつなげていきたいです。

委託先で受けた一つの依頼から世界に一体の招き人形が生まれた

――プロフィールで見かけた「招き人形」も気になっていました。どのような作品なのですか?

大久保さん:招き猫の顔を、ご本人や贈りたい相手のお顔に変えて、デフォルメして作る世界に一体の陶芸作品です。得意だった似顔絵と、好きだった立体づくりの組み合わせで、お店のシンボルや敬老の日の贈り物などに使っていただけるものです。

――どのようなきっかけで生まれたのでしょうか?

大久保さん:陶芸アクセサリーを制作して販売もしています。そのアクセサリーを置いてもらっている委託先のお店で、「自分の顔でお香立てを作ってほしい」という依頼を受けたことがきっかけです。作ってみるととても好評で、半年ほど後に、その方のお店のシンボルになる人形も頼まれました。ヒアリングを重ねて作ったのが最初の一体です。

それなら「あなただけの、世界に一体の人形を作ります」と売り出してみようと思って始めました。現在は中・大サイズを承っていて、瞑想会も招き人形も連絡窓口はInstagramです。

活動概要

項目 内容
活動名 Kinco(キンコ)
氏名 大久保 雪恵(おおくぼ ゆきえ)
活動拠点 福井県福井市
活動内容 陶芸(器・人形・オリジナル作品)の制作、陶芸ワークショップ、対面・オンラインのマインドフルネス瞑想会(キャンドル瞑想・スイーツ瞑想など)、招き人形(中・大サイズ)のオーダー制作
Instagram https://www.instagram.com/kinco5615/

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インタビューを終えて

今回の取材で印象に残ったのは、AIの話が効率化で終わらなかったことです。台本づくりは、3〜4日から1日へ。ただ、大久保さんが大切にしていたのは、考えを外へ出して客観的に見る時間の方でした。紙に書き出す瞑想と、ChatGPTへ長文を投げる使い方。

ツールは変わっても、整える前に出すという動きはつながっています。

もう一つは、最後に直すのは自分だという線引きです。返ってきた言葉が違えば伝え直し、合わない日は自分の台本へ戻る。その距離感があるからこそ、AIに振り回されずに、自分の活動のツールとして使えているのだと感じました。もし明日試すなら、頭の中を整えずに、長文で一度送るところからです。

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この記事を書いた人

渡部 一善(かづ)のアバター 渡部 一善(かづ) AI現場ログ 運営・編集責任者

AI現場ログの運営・編集責任者です。企業や現場でAIを使う人への取材と、AI導入を検討する担当者向けの記事制作を行っています。

主な取材・執筆分野は、AI導入支援会社の選定、RFP、PoC、費用、セキュリティ、社内ルール、業務改善、AIツール比較です。インタビューでは本人の発言や提供資料をもとに構成し、聞いていない体験や成果を加えません。

記事はAI導入を検討するための一般的な情報と判断材料であり、法律、税務、医療、情報セキュリティ等の個別専門判断を代替するものではありません。

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